先日、海外転勤時における所得税の取扱いについて、説明しましたが、今回は児童手当について書きたいと思います。これから、海外へ転勤する予定のある方、海外へ移住を検討される方については、一つの参考となればと思います。
児童手当とは
児童手当については調べると内閣府のサイトへ掲載されていたため、以下内閣府のサイトからの引用です。
児童手当は、子ども・子育て支援の適切な実施を図るため、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的としています。0歳から中学校卒業までの児童を養育している方に支給されます。
(内閣府Webサイトより引用。以下、児童手当の条件等については同サイトから引用)
何を書いてあるか良くわからない文章ですね。まさに霞が関的文学です。
要するに子育てする父母らに対して、0歳から中学校卒業までの子供を養育している世帯に対して金銭的支援を行うというものです。
児童手当の対象者・所得制限
支給対象:中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している方
所得制限:下記所得制限限度額を超える場合は、5,000円の支給となります。
扶養親族等の数 | 所得制限限度額(万円) | 収入額の目安(万円) | |
0人 | (前年末に児童が生まれていない場合 等) | 622 | 833.3 |
1人 | (児童1人の場合 等) | 660 | 875.6 |
2人 | (児童1人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等) | 698 | 917.8 |
3人 | (児童2人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等) | 736 | 960.0 |
4人 | (児童3人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等) | 774 | 1002.0 |
5人 | (児童4人 + 年収103万円以下の配偶者の場合 等) | 812 | 1040.0 |
児童手当の支給額
実際の支給額は下記のとおりです。
児童の年齢 | 児童手当の額(一人あたり月額) |
3歳未満 | 一律15,000円 |
3歳以上 | 10,000円 |
小学校修了前 | (第3子以降は15,000円) |
中学生 | 一律10,000円 |
児童手当支給ルール
支給に際しては、下記のような支給ルールが適用されます。
- 原則として、児童が日本国内に住んでいる場合に支給します(留学のために海外に住んでいて一定の要件を満たす場合は支給対象になります)。
- 父母が離婚協議中などにより別居している場合は、児童と同居している方に優先的に支給します。
- 父母が海外に住んでいる場合、その父母が、日本国内で児童を養育している方を指定すれば、その方(父母指定者)に支給します。
- 児童を養育している未成年後見人がいる場合は、その未成年後見人に支給します。
- 児童が施設に入所している場合や里親などに委託されている場合は、原則として、その施設の設置者や里親などに支給します。
子供が海外にいても児童手当が支給される条件
前述の支給ルールでポイントとなるのが、1.に記載されている「留学のために海外に住んでいて一定の要件を満たす場合は支給対象になります」についてです。
個別具体的な事案については、各地方自治体の判断になるようですが、下記1~7の要件すべてを満たす必要があります。
- 児童が外国に住む前日までに、継続して3年以上日本国内に居住していたこと。
- 外国の学校で教育をうけることを第一の目的として、児童が外国に住んでいること。
- 児童が外国で父母などと同居していないこと。
- 児童が外国に住んでから3年以内であること。(児童が外国に住んでから3年を経過した時点で、手当を受給することができなくなります。)
- 在学証明書など、児童の留学期間や留学をしている事実がわかる書類を提出できること。(外国語で書かれている場合は、日本国内に居住する第三者による日本語訳も必要です。)
- 家族の生活が一体の生活であること。(児童と離れて生活していても、常に生活費や学費などの送金をしている・電話などで連絡をとっている・機会があれば会っているなど。)
- 児童が留学を終えたら、日本に帰国すること。
留学を目的として、海外の学校へ行く場合、児童手当を受給することはできるようです。ただ、3に記載のある「父母などと同居していないこと」という条件を満たすためには、海外で寮生活あるいは、ホームステイなどをしている子供しか対象とならないというになります。
父母らが海外に居住し子供が日本に残る場合
こちらについては、先ほどの支給ルールの3の「父母が海外に住んでいる場合、その父母が、日本国内で児童を養育している方を指定すれば、その方(父母指定者)に支給します。」とあるため、父母の両親等を養育者として指定すれば、児童手当が支給されます。その場合、当然ですが、海外にいる子供の両親ではなく、養育者(子供から見ると祖父母)の銀行口座へ児童手当が振り込まれます。
実態上の取扱い
ここまで色々なケースを記載しましたが、実態上はどのような取扱いを受けるかというと住民票を残したまま(海外転出の届出をしていない)で海外へ渡航した場合、指定された口座へ児童手当の支払いが行われます。ただし、定期的に児童手当を支給する自治体から現状確認が書面送付されてくるため、虚偽の申告をした場合、後になって児童手当の返還という形になる可能性があるため、正しく申告しましょう。
まとめ
児童手当については、日本国内に居住し対象となる年齢の子供を養育していれば受給することができます。また、子供のみが海外へ就学目的で渡航した場合であっても、条件を満たせば、国内に居住する父母らは受給することができます。制度の本旨を理解し、上手に活用していきましょう。
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